演奏家と再現家 1

2021年04月26日

箏/三味線/尺八の世界では、「そんな弾き方しないで!」「こんなのは尺八じゃない!」といったような言葉が飛んでくることがあります。もちろん他の分野にもありますが、和楽器は特に顕著です。

観察してみると、このような論争は《再現家》と《演奏家》の間で起こるようです。

《再現家》とは
ー【過去の特定の音/吹奏手順/曲目を最高の演奏とし、それを目指して演奏している奏者】

《演奏家》とは
ー【過去の演奏を参考に、自分なりの解釈で演奏している奏者】

だと考えます。古典は再現家/現代曲は演奏家、というように曲によって変わる奏者さんももちろんいらっしゃいます。そして「あなたは再現家だー!!」「演奏家は古典はやらねー!!」などと子供じみた決めつけをする気もありません。どちらが正しいかなんてこともありません。


私は、両方いないといけないと考えています。
お互いが理解して尊重しあえれば結構。どうしても気になるのならせめて言い合いは止めたい。ちゃんと自分と相手の立場を認識すれば、喧嘩ではなく健全な議論になるのではと思い、この記事を書いています。

今日はその《再現家》についてお話しします✨

  1. 《再現家》の強み
  2. 昔ながらの尺八を好む《再現家》
  3. 明確に教えることが決まっている《再現家》

早速行ってみましょー(^O^)/

箏は古典と宮城道雄先生の曲が好き🌱
箏は古典と宮城道雄先生の曲が好き🌱

1、《再現家》の強み

繰り返しになりますが、《再現家》とは【過去の特定の音/吹奏手順/曲目を最高の演奏とし、それを目指して演奏している奏者】です。その強みを3つまとめました。


・良い演奏を再現しようとしてるので、一定の完成度に達やすい

既に完成度100%がはっきりしているので「自分が完成度◯%」と言いやすいのは、音楽という目に見えない分野において相当強いです。目指す「音色/テンポ/歌い方/強弱」も決まっているので、練習課題が見えやすいでしょう。


・再現家同士が合奏するとすんごいパワー

例えば、山本邦山先生の"壱越"。尺八奏者さんは山本邦山先生/米川裕枝先生の演奏を再現しようとしているとして、箏の方も同じ演奏を参考にしていたら、それはそれは素敵な合奏になるでしょう。

名手が作り込んだ音楽で同じように練習してきていますから、合わない訳がありません。


・古典曲を残す最大戦力

《再現家》がいなければ、純邦楽の古典曲や細かな技法はとっくに消滅しているでしょう。今でこそ、CDやアップルミュージック等様々な媒体でいつでも聞けますし、録音機器もお手頃になって、データを残すことになんの苦労も要りません。

しかし、昔は「先生のお稽古で覚える。しかも楽譜もない。」から始まっています。《再現家》がいてくれるから、楽器の歴史が続いて行くのだと思います。尺八において、音楽的に非常に効果のある昔ながらの技法が消えかかっているのも事実。

美術の世界でも作品を保存する専門家がいるように、和楽器の世界にも技法や演奏を保存する専門家が必要です。


2、昔ながらの楽器を好む《再現家》

過去の演奏を良しとするので、【新しい概念の尺八】【追いかけている奏者が使っていない楽器】【特定の音色が出しにくい楽器】はNGでしょう。例を挙げると

  • チの1打ちが出来ない
  • チのカリでリの大メリが出せない
  • 地無し管に近い音色じゃない

というような楽器は再現家にとっては使いにくいと思います。

昔ながらの尺八にはそれはもう艶っぽい音が出る物があります。そして楽器自体の調律の癖を、奏者が工夫して正す時の【技】が良い味を出す時もしばしばです🌺



3、明確に教えることが決まっている《再現家》

目指す「音色/テンポ/歌い方/強弱」も決まっていて、加えて「使う技法」「タイミング」もしっかりと見極めているので、生徒さんにも同じように教えるでしょう。問題点が見える化しているので、生徒さんの曲の完成度についても◯%と明確で、師弟間で進捗状況が把握しやすいです。

問題点としては、

  • 違う演奏方法が許されないし、生徒も他の演奏を許せなくなる
  • 生徒がやりたい曲と《再現家》のレパートリーが合致しないと教えられない
  • 演奏にあって欲しい【試行錯誤の痕跡】が無くなる

ということが挙げられると思います💦



終わりに

本日は《再現家》には【古典を残す最大戦力】【昔ながらの尺八を技で艶めかせる】【明確な指導方針】という強みがあるよ、というお話をいました。次回は《演奏家》について書こうと思います。

ちなみに私は曲によって変わる人です😊
「六段は山口五郎先生目指したいー!!」「この曲もっと激しくてよくね?」とコロコロ変わります笑

お互いが理解しあって一緒に邦楽を残せたらと、願っています。箏/三味線/尺八は結構ピンチです。


京都の尺八奏者ー元永泰輔


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